新たなる希望!井出四段vs渡辺竜王戦に学ぶ四間飛車・分析編
スポンサーリンク
本エントリーでは、棋界屈指とも言われる新進気鋭のノーマル四間飛車の使い手・井出隼平四段初の著書「四間飛車 序盤の指し方完全ガイド (マイナビ将棋BOOKS)」から、あの渡辺竜王の居飛車穴熊を破った自戦記を、ピヨ将棋の形勢分析機能にかけてみたいと思います。
「新たなる希望!井出四段vs渡辺竜王戦に学ぶ四間飛車」というエントリーにて対するサブエントリーの、第四回目になります。
はじめに
前回は、井出四段の端攻めが見事に決まり、渡辺竜王相手に大金星を挙げるところまでを、ご紹介させていただきました。
途中、井出四段が「もしかしたら結構やれているのかも」「これは優勢だ!」と意識した箇所がありましたが、果たしてコンピュータ将棋はどう形勢を判断するのか?
せっかくなので、ピヨ将棋のレベルをMaxにして、形勢分析をしてみたいと思います。
序盤は渡辺竜王優勢だった
【第1図】
初手からの指し手:△3四歩▲7六歩△8ニ歩▲6六歩△6ニ銀▲6八飛△4ニ玉▲3八銀△5四歩▲7八銀
実のところピヨ先生曰く、序盤どころか割と終始渡辺竜王優勢の評価でした。第1図の▲7八銀のところで渡辺竜王の評価が上がり始め、
【第2図】
第1図からの指し手:△5ニ金右▲5八金左△3ニ玉▲1六歩△3三角▲7七角
この▲7七角のあたりで、渡辺竜王に+300ポイントくらいの優勢評価がつき、
【第3図】
第4図からの指し手:△8五歩▲4八玉△2ニ玉▲3六歩△5三銀▲4六歩△1ニ香▲3七桂△4四歩▲1五歩△1一玉▲3九玉△2ニ銀▲4七金
この辺りで序盤最大、+500くらいの評価が渡辺竜王につきます。やはり、ノーマル四間飛車vs居飛車穴熊だと、コンピュータの評価はイビアナの方が高いようです。
中盤少し盛り返す
第3図からは少し井出四段側が盛り返し始め、
【第4図】
第3図からの指し手:△4三金▲2八玉△7四歩▲2六歩△9四歩▲6五歩△3一金▲5六歩△7ニ飛▲6七銀
この▲6七銀あたりで、再び渡辺竜王の優勢評価が+300くらいに落ち着きます。からの、
【第5図】
第4図:第3図からの指し手:△7五歩▲同歩△同飛▲7八飛△7三桂▲6八角△7八飛成▲同銀
飛車交換で、一旦形成がほぼ互角に戻ります。
- この辺り、渡辺竜王の思惑通りに飛車交換。
- 互角のさばき合いは、玉が固い方(つまり、この場合穴熊)が有利。
だと思っていたので、この互角評価はちょっと意外です。
実は直前まで渡辺竜王優勢評価
井出四段工夫の▲同歩の場面(通常は同桂)ですが、その工夫はピヨ先生には通じず。ここでまた渡辺竜王の優勢評価が+300くらいに戻り、
【第7図】
第6図からの指し手:△9九角成▲7一飛△6五桂▲9一飛成
ここらあたりで+700と、渡辺竜王の評価値がかなり上がります。井出四段も「駒損の上に相手は穴熊、まるでいいところなしのように見える(が、▲5七銀の働きが弱いことにかける)」と自評していますが、ピヨ先生の評価はストレートです。からの、
この局面。「意外と自分がやれているのではないか」と井出四段が判断した局面ですが、確かにこの△7七歩をピヨ先生も疑問手評価。井出四段の判断と一致します。優勢評価的には渡辺竜王の+700→+300弱くらいにガクっと落ちたので、「渡辺竜王が優勢ゆえにちょっと油断した」といったところでしょうか?しかし、
井出四段得意の端攻めをピヨ先生がまたもや疑問手評価。
【第10図】
第9図からの指し手:△1四同歩▲1三歩△同香▲4四香△7八歩成▲1三角成△同桂▲4三香成
ここらあたりで、渡辺竜王の優勢評価がピークに達します。井出四段がはっきり優勢を意識した局面ですが、ピヨ先生の評価は真逆です。真逆なんですが・・・
前回のエントリーにて「素人目には苦戦を認める手にも見えなくもない」と私が書いた局面ですが、なんと、ピヨ先生と意見が一致。悪手判断が入り、また一挙に形勢が互角に戻ります。からの・・・
【第12図】
第11図からの指し手:▲3ニ金△6四角▲3一金△9一角
ここでようやく形勢評価が逆転、井出四段側に初めて優勢評価+300がつきます。そして、
【第13図】
第12図からの指し手:▲2一金△1ニ玉▲3ニ金△3一香▲3三香
井出四段が「決め手」と語る▲3三香をピヨ先生も好手評価。本譜初の好手評価となり、評価値も最大の+1500くらいに広がります。
【結果図】
第13図からの指し手:△3三同銀▲同成香△同馬▲同金△同香▲2ニ銀△投了
そしてそのままの優勢評価で渡辺竜王投了、井出四段の大金星です。
おわりに
いかがだったでしょうか。将棋ソフトによっては飛車を振っただけでガクンと評価値が下がるものもあると聞いたことがありますが*1、思っていたよりも終始渡辺竜王優勢評価だったので、少し意外でした。第10図が後手優勢というのも、素人目には少し釈然としないような気も、しないでもありません。端に劇弱の▲3七桂型高美濃囲いで端攻めしたからかもしれませんが。
というわけで、本エントリーの内容はここまでになります。最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
参考書籍一覧
四間飛車 序盤の指し方完全ガイド (マイナビ将棋BOOKS)
- 作者: 井出隼平
- 出版社/メーカー: マイナビ出版
- 発売日: 2018/03/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
*1:井出四段によると、四間飛車はまだましな評価らしいです。