【どれ?】改めて考える初心者にお勧めの将棋戦法【四間飛車vs棒銀】

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本エントリーでは、改めて初心者にお勧めの将棋の戦法について、考えてみたいと思います。

はじめに

前前前回のさらにその前の回の最後にちょろりとネタフリしていましたが、今回より装い(ブログタイトル)も新たに、ネタの枯渇解消のため、正式に棒銀ネタも取り入れていってみようかなと思っています。

その最初のテーマはズバリ、「結局初心者に一番お勧めの将棋の戦法ってなんなんだろう?」これです。将棋を始めた頃に一度初心者なりに考えてみましたが、思えばその頃からだいぶ月日も経ちました。

当時は、引かぬ・媚びぬ・省みぬの特攻棒銀に挫折し、やっぱり守りって大事だよねと四間飛車を始めてみた頃でした。それから曲りなりにも将棋ウォーズ1級となり、有段者ではないもののさすがにもう初心者でもないかなと思う日々。守り一辺倒のノーマル四間飛車にも何度か挫折し、そのたびに棒銀に再チャレンジしたりもしてみて、現在では棒銀でも将棋ウォーズの月間棋力が1.5級前後くらいはあるんじゃないかという、気がします。

そんな、結果論的に四間飛車と棒銀同じくらい指してみた私が、初心者~級位者の目線で、あわよくば初段くらいにはなれるんじゃないか的な観点から、再度お勧め戦法について考えてみたいと思います。

ついでに、せっかくなので、初心者向け戦法第三の男・原始中飛車も、比較対象に入れてみます。結局得意戦法を何にするか、悩んでいらっしゃる方の、何かしらの参考にでもなりましたら幸いでございます。

戦法その1:四間飛車

一般に、「初心者にお勧めの四間飛車」というと、角交換四間飛車ではなく、従来的な角道クローズ型のノーマル四間飛車を指すと思います。ですので、ここでは特に断りが無い限り、四間飛車=ノーマル四間飛車で話を進めます。

初心者にお勧めだと思える点

守りの基本を学べる

色々考えてみましたが、分かりやすくお勧め出来そうな点は、これなんじゃないかという気がしてきました。「守りの基本は金銀三枚。飛車の反対側に玉を囲う」と言われているかと思いますが、美濃囲いはまさしくこれです。

兵法の大家・孫氏大先生は、おっしゃっています。「善く戦うものは、不敗の地に立ちて、敵の敗を失わざるものなり。」と。意味としては、「戦いが上手な人は、まず自陣を『絶対に負けない』態勢にした上で、敵が『絶対に負ける』という勝機を見逃さないものだ」といった感じでしょうか。

即ち、兵法の観点から考えると、「まず堅固な美濃囲いに囲って、相手の出方を伺う」ノーマル四間飛車は、理に適っているのです(ほんとか?)。以下をご覧ください。

【参考図:四間飛車(下)と居飛車(上)の玉・飛・角の位置】

美濃囲いの玉は見事に飛車角の射程から逃れていますが、居飛車側は角のロックオンから逃れ切れていません。居飛車って結構、「角のロックオンを逃れつつ、飛車交換された際にも打ち込み耐性がある」玉の位置って、難しいと思うんですよね。

参考図を見れば誰だって、四間飛車側の方がいいと思うんじゃないでしょうか。「四間飛車は振り飛車の中では攻守のバランスがいい」なんて二言目には出てきますが、級位者レベルの私では、今もってそれは実感出来ません。ノーマル四間飛車はやっぱり、守りの戦法のイメージが強いです。そして、まずは守りて後に攻めに転じるのが、兵法のセオリーです。

「ある意味」バランスがいい

「守りの基本を学べる」。先の特徴は、四間飛車というよりも美濃囲いの特徴ですよね。四間飛車じゃなくても、三間飛車にも当てはまります。中飛車だと、囲いは片美濃囲いになりがちなので、ちょっと事情が違うでしょうか。片美濃囲いも悪い囲いではないですが、「金銀3枚」というセオリーは外しているので、少し上級者向けになってくる感があります。向かい飛車も、美濃囲いに囲めると言えば囲めますが、wikipediaによると、バランス的に左金は7八に持って行くことも、多いみたいです。

【参考図:向かい飛車の駒組の例】

しかしそれ以前に、向かい飛車は情報が少ない気がします。試しにAmazonで検索してみましたが、王道っぽい入門書がほぼヒットしないので、初心者には辛いのではないでしょうか。

という訳で話を戻して、「同じ美濃囲いなのに、何故初心者には三間飛車ではなく、四間飛車がお勧めなのか」というところですが、

先後近い感覚で指せる

これではないかと、思いました。私は、三間飛車はあまり指したことが無いので、実感としてあるわけではありませんが、wikipediaやyahoo知恵袋なんかでは、「四間飛車より一手の差が大きいため、先手番・後手番で戦い方が全く異なる」なんて、ちょくちょく見かけます。

先後戦い方を変えないといけないとなると、初心者的には覚えること倍増で、結構辛いですよね。四間飛車も、後手番だと角交換を挑まれたり先手番にはない変化が生まれる余地はありますが、そこを通過すればそこそこ先後近しい感覚で戦えるかと、思います。

守りの基本を学べて、先後近い感覚で指せ、入門書も多い。このあたりが四間飛車は、「初心者が学ぶ」という観点において、ある意味バランスがよいのではないかと思いました。

初心者には難しいと思われる点

中盤以降が難しい

続いて、四間飛車が、初心者が指しこなすには難しいと思われる点ですが、これも四間飛車あるある、美濃囲いに組んだ後に路頭に迷いがちな点です。

「攻守のバランスがいい」との触れ込みのこの四間飛車、棋力が低いうちは守っても色んな居飛車急戦に悩まされますし、攻めても居飛車穴熊が辛い、相手に攻められても守られても辛い側面があります。

四間飛車は、あくまでも「初心者が守りの基礎を学ぶ上でバランスがよい」から、初心者にお勧めなのであり、「初心者に分かりやすく強いから」初心者にお勧めなのではないような、気がします。

相振り飛車になると途端に傍流

もう一つ、初心者が四間飛車を指しこなすのは難しそうだ思える点が、これです。対抗型だと花形な四間飛車も、相振り飛車だと途端に傍流になる感が、ないでしょうか。

ノーマル四間飛車的な出だし(▲7六歩~▲6六歩)からの相振り飛車の駒組と言うと、

相振り飛車を指しこなす本〈1〉 (最強将棋21)

相振り飛車を指しこなす本〈1〉 (最強将棋21)

  • 作者:藤井 猛
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 単行本

やっぱり藤井先生の本が王道だと思いますが、向かい飛車に振っています。また、後手だと一手の違いが大きく、先手三間飛車に対して同じような駒組は出来ません。三間飛車だけのことを考えると、一旦四間飛車にワンストップすれば、近しい駒組が出来なくもないと思うのですが、中飛車+端角とか、飛車が角にロックオンされて悩ましいことになりますし、後々ワンストップの手損が効いてくることも、あるかと思います。

ということで、相振り飛車においては、対抗型における四間飛車のような、「安心感があって分かりやすく、先後近しい感覚で指せる」、初心者に親切設計な序盤の駒組手順がなかなか見いだせないのが、初心者には難しいところではないか・・・と、思いました。

戦法その2:棒銀

続いて、棒銀について考えてみたいと思います。

初心者にお勧めだと思える点

攻めの基本を学べる

銀・歩と連携して飛車先を突破するのは、将棋の基本。守りの基本を学べる四間飛車に対し、攻めの基本を学べるところが、棒銀を初心者にお勧め出来るポイントではないでしょうか。しかもこの「棒銀風の攻め」、将棋の色んな戦法で出てきます。受け方も併せて学ばないと、お話になりません。美濃囲いは基本的に振り飛車でないと使えませんが、「棒銀風の攻め」は、居飛車・振り飛車を問わず広く応用できるものだと思います。

将来的に何を得意戦法にしようとも、広く応用出来る基礎技術として、棒銀は初心者が最初に学ぶに値する戦法だとは、思いませんか?

どの戦法にも対抗できる

先ほど、「四間飛車は相振り飛車が辛いんじゃないか」と私設をご紹介させていただきましたが、棒銀は、ポテンシャルとしては、どんな戦法にもそれなりに対抗できるのではないかと思います。棒銀の基本は相居飛車ですし、対抗型にももちろん使えます。プロや将棋ソフトの目線だと、厳密には不利になる戦型もあるみたいですが、アマチュア初段前後でそこまで致命的に不利になる戦型は、無いんじゃないかと思います。

初心者にお勧めの戦法として、「広く使える」という視点ももちろん大事ですが、「致命的に苦手な相手がいない」というのも、初心者にとっては大事ではないでしょうか?

初心者には難しいと思われる点

大抵は受けられる

四間飛車とはまた違った意味で、やっぱり棒銀にも中盤以降路頭に迷いがちな側面があるのではないかと、思います。特に、棒銀の入門書は、棒銀の破壊力を分かりやすく説明するために、「相手があえて受け損なう」ような接待将棋になっているシーンも、あったりなかったりするような気がします。そんな「棒銀の成功例」だけを見て将棋を始めると・・・

【参考図:棒銀初心者の洗礼?】

ここでいきなり路頭に迷ったりすることも、あるんじゃないでしょうか。「棒銀は攻めの基本」ということは、裏を返すと、「棒銀を受け切ることが、守りの基本」とも言えます。どんな戦法にしても、「棒銀の受け方」は必修科目になっている感があり、情報量も多いです。初心者が棒銀の攻めを成功させるなんて、そうそう出来ないのではないでしょうか。それに追い打ちをかけるような難しポイントが、

守りが難しい

これです。対抗型における船囲いはそこまで悪い囲いではないと思いますが、相居飛車における囲いはなかなかに難解だと思います。攻めを行いつつ同時進行で、攻め足の速さを殺さないよう気を使いながら、ちょこちょこ玉形に手を入れていかなければいけないと思うので、なかなかに高等テクニックです。

  • 大抵は攻めが受けられる
  • 守りが難しい

このコンボを喰らうと、攻めあぐんでいる間に攻め潰されます。また、攻めが成功したといっても、

守りの銀と攻めの銀を交換出来れば、棒銀は成功

これです。飛車が成り込めたならともかく、百歩譲ってタダ取り出来たならともかく、交換したら成功と言われても、最初のうちは路頭に迷うこと請け合いです。まだ対抗型のように、大駒交換が目標なら話は違ったかもしれません。大駒を撃ち込めれば強いですし、横からの打ち込み合いなら美濃囲い堅いですし。しかし、「銀を撃ち込んでなんとかしろ」と言われても、初心者にとっては「どうせぇっちゅうねん」と感じてしまうかも、しれません。

戦法その3:原始中飛車

最後に、四間飛車vs棒銀論争に、存在感を消しつつしれっと紛れ込んでくる印象のある(人聞きの悪い・・・)この戦法・原始中飛車についても、比較してみたいと思います。

メジャー戦法の四間飛車や棒銀に比べてなんとなくマイナー・奇襲戦法扱いされることもある原始中飛車ですが、果たして?

初心者にお勧めだと思える点

それって実は原始中飛車のこと

四間飛車の特徴の説明文として、よく「攻守のバランスが良い」「いつでも使える(得意戦法を一つに絞った方がよい初心者と相性がいい」なんて見かけるんじゃないかと思いますが、個人的に、

原始中飛車こそが、まさしくそれ

なんではないかという、気がしています。上の方でも触れていますが、初心者目線だと、四間飛車ってバランスが守りに寄っているような気がしますし、後手だと確実に使えるとは、言えません。対して、原始中飛車中飛車の駒組は以下の通り、

【参考図:原始中飛車の駒組】
https://shogipic.jp/v/QGX.png

歩の水面下で駒組を進めるので、基本的に止めようがありません。囲いが片美濃囲いになっているので守備力は四間飛車に劣りますがその分攻撃力があり、まさしく「攻めの棒銀」「守りの四間飛車」に対して「バランスの原始中飛車」なイメージがあります。

分からん殺し

先ほど、「棒銀の攻めは有名すぎて、大抵対策を立てられている。初心者がそうそう攻めを成功できるものではない」と、私設をご紹介させていただきました。対して原始中飛車、マイナー戦法扱いされることもあるためか、そこまで対策を立てられているものではない気が、します。

一例を言いますと、「(原始)中飛車vs棒銀」なんて戦型、棒銀目線で探してもなかなか対策が出てきません。この辺でちらりと触れていますが、私は棒銀で中飛車を相手にするとき、かなり探り探りです。

一方で中飛車側は豊富な棒銀対策情報を得ることが出来ますので、これは有利と言えるのではないでしょうか。

初心者には難しいと思われる点

情報量が少ない

先ほど「分からん殺し」が出来るといいましたが、逆を返すと、「自分が学ぶ情報量が少ない」とも言えます。私がようやく探し当てた原始中飛車の書籍が

奇襲振り飛車戦法 ~その狙いと対策~ (マイナビ将棋BOOKS)

奇襲振り飛車戦法 ~その狙いと対策~ (マイナビ将棋BOOKS)

  • 作者:飯塚 祐紀
  • 発売日: 2014/12/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

これでしたが、にしたところで、原始中飛車の専門書というわけではありません。しかも、お互いが最善を尽くした最終局面は、原始中飛車側が悪くなっています。

数少ない書籍が不利で終わっているこの状況、これまた違った意味で、路頭に迷いそうです。それに加えて、初心者を不安にさせるポイントが、

吹きすさぶ低評価の嵐

これだと思います。将棋ウォーズの戦法紹介でもwikipediaでも、なんだか散々な評価です。同じ「原始」仲間の(?)原始棒銀は「名前に原始とついているが、決して油断出来ない」とこんな感じの評価ですが、原始中飛車の場合は「いい戦法とは言えない」とバッサリ。

wikipediaでも、「受け方の定跡は確立しており、プロ棋士同士の対局で出現することは皆無に近く、アマチュアでも有段者が指すことは極めて少ない」といいとこなし。アマチュアはまずは初段を目指す方が多いのではないかと思いますが、「有段者が指すことは極めて少ない」なんて言われると、「そんな戦法で初段になれるのだろうか?」と、思いませんか?

他人の評価を気にしすぎる必要はないかもしれませんし、実際将棋ウォーズで、原始中飛車の高段者の方もいます。自分に合いそうであればそこまで評価を気にしすぎることもないのかもしれませんが、

他人にお勧めするとなれば、話はまた別です。普通、「お勧め」とは、評判の良いものを推薦するイメージがあります。評判の悪いものを推薦されても、「それってホントに大丈夫?」と、最悪人格を疑われてしまうかもしれません(大げさな)。

結局どれやねん

ここまで色々と比較してきましたが、そろそろこんなツッコミが聞こえてきそうです。

「初心者がいの一番に指す戦法」としては、棒銀が悪くない気がするんですよね。上の方にも書きましたけど、他の戦型でも広く応用が利く、基本手筋だからです。

しかし、そこから一歩前進して、「ある程度上達するまでの一定の期間、初心者が長く指し続けるのにお勧めの戦法」というと、また話が違ってくるのではないかと思います。守りもバランスよく学べた方がいいのではないでしょうか。

純粋に戦法的なポテンシャルで言うと、原始中飛車とか悪くない気がするんですよ。本当の意味で攻守のバランスがいいですし、「有段者はめったに指さない」と言っても、将棋ウォーズの2~3級くらいまでは問題なく通用する気がします。そこで行き詰れば、角交換型の中飛車である「ゴキゲン中飛車」にチャレンジするなどの手もありますし。あの藤井先生も、最初は中飛車を指していたとおっしゃっています。

しかしいかんせん、情報量が少ないのはやっぱりネックな気がするんですよね。やっぱり難しいのか、「初段を目指すブログ」とかで検索してみても、原始中飛車でチャレンジしている人がヒットしません。

ということで、セカンドベスト的というか消去法に残ってくる戦法というと・・・そう、四間飛車です。これはこれで、検索してみると、「難しい」「おすすめしない」という情報がいっぱいヒットしますし、それはそれで「確かに」と思うのですが、全ての条件を満たすベストな選択肢が、なかなかありません。

先後似た感覚で指せる、ノーマル三間飛車の定跡書とかがもっとあれば、もしかしたら話が違うのかもしれません。でも、三間飛車で美濃囲いに囲うと、デフォルトで飛車金が割銀食らう位置にいるのが、個人的に嫌なんですよね。初心者は多分、高確率でうっかり食らうような気がします。

おわりに

いかがだったでしょうか。私自身、四間飛車で色々苦労もして、挫折気味のところもある割に、こうしてみると・・・「初心者が学ぶ」という意味ではなんとなく、四間飛車が環境が整っているような、気もします。

観点変われば結論も変わってくるかと思いますので、「いやいや、この観点だと、この戦法がお勧めだぜ!」等々あれば、コメントお願いします。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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