後手四間飛車vs矢倉引き角の基本定跡
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本エントリーでは、後手四間飛車vs矢倉引き角の基本的な定跡をご紹介させていただきたいと思います。引き角自体は穴熊とも組み合わせて使用出来きますので、本エントリーの内容はそれなりに応用が利くのではないかと思います。
よろしくお願いいたします。
はじめに
今回は基本定跡シリーズでは初の後手番になります。先後応用が利くようにというのもあるのですが、他にも思うところありまして、そのあたりは後ほど説明させていただきたいと思います。
というわけで、例によって例のごとく、四間飛車側は後手番ではありますが先後逆、即ち後手の四間飛車が下側、先手の矢倉引き角が上側で、局面図を表記いたします。あらかじめご了承ください。
矢倉引き角に分岐するまで
今回は以下二つの理由により、四間飛車基本形からではなく、最初から局面図を記載したいと思います。
- 後手番である。
- 他の船囲い急戦より早く、分岐する。
相手は引き角を狙っているので、いきなり角交換を狙ってくることはありません。とりあえず、角道は閉じておきましょう。
このあたり基本的に引き角の気配すらなく、オーソドックスな船囲い急戦の手順です。とりあえず四間飛車に振っときましょう。
玉を動かすところも全く同じです。
▲3八玉と▲3八銀、どちらからいくかもお好みで問題ありません。
四間飛車側はまだまだ駒組みが続きますが、引き角側は概ね駒組みが完成し、仕掛けられる状態になってきました。後手だと駒組みが終わるまでの時間差がさらに広がりますね・・・
ようやく四間飛車側も美濃囲いが組み上がってきました。
飛車先は当然、角でガードですね。
ここがポイントです。
△7四歩を突かず、△4二銀と上がってくると、矢倉引き角のサイン
と見ることが出来ます。あくまでも、一つのサインですが。ですので、ここからは矢倉引き角に備えます。
矢倉引き角の基本定跡
とりあえず、突けるうちに端歩を突いときます。
引き角側が9筋の歩を突くのは、▲9五角の逃げ道を防ぐためです。「端歩は税金」なんて言われ方をしているようですね。こちらの端歩も、お付き合いしておいて問題ないと思います。
「銀には銀を」なんて言われ方するみたいですが、相手の銀にあわせ、こちらの銀も上がります。
相手が角を引いて引き角の体制を整えてきたのに対し、四間飛車側もギリギリ駒組みが間に合いました。こちらが、
(後手)四間飛車vs矢倉引き角基本形
になります。
ほぼこうなるであろう最有力変化
疑惑の力量
みなさまは四間飛車のセオリーを覚えていますか?その中の一つに、「仕掛けられそうな筋に、前もって飛車を動かす」というものがあります。そのセオリーから考えると、先の「四間飛車vs矢倉引き角基本形」は、
一見、飛車を回すのが間に合っていない
ように見えます。しかし、vs矢倉引き角の場合、これが定跡なのです。先手番の場合は飛車を回す余裕が生まれますが、それでも、▲4六歩あたりを突いて、飛車を回さずに待ちます。それに対して、引き角側もすぐには攻めず、棒銀と組み合わせて攻めるのがより高度な定跡なのですが・・・
ここで二つ問題があります。一つ目はずばり、
定跡を知っているからあえて飛車を回さないのか、定跡を知らないから飛車を回さないのか、区別がつかない
点です。そして二つ目は、
特に四間飛車側が後手番の場合、引き角単体でも、互角に戦える
点です。むしろ、最善を尽くさないと厳しいのは四間飛車側の方かもしれません。
- 定跡を知らないなら攻め潰せる
- 知ってたとしても互角以上に戦える
ならば、とりあえずこのまま攻めてみるのも一興というものではないでしょうか?
・・・と、居飛車党の人が考えているかどうかさておき、基本定跡に含めてもいいのではないかと思うくらい、このまま引き角単体で攻めてくるケースが、個人的にほとんどです*1。
というわけで、本来であれば引き角単体と引き角+棒銀は分けたいところですが、一旦引き角単体を基本定跡の結果に含めておこうと思います。
四間飛車vs矢倉引き角基本形から結果図まで
四間飛車vs矢倉引き角基本形から、棒銀と組み合わせずに、引き角単体で攻めるパターンです。ちなみに、穴熊の場合引き角と組み合わせれば、必然的にこうなります*2。
この時点で、飛車を回します。角を取りに行くと飛車がタダ取られされるので、さすがに引き角側もそうはしません。
ここでは、
間違っても▲8六角と角を取ってはいけません
△同歩されれば、飛車が押さえ込まれて大ピンチです。そこで反撃する手段は二つ、▲7五歩と▲6五歩がありますが、どちらかというと▲6五歩の方がオーソドックスかと思います。
引き角側の狙いは、再び角を引き、歩と飛車の連携でこちらの飛車を抑え込むことですが、四間飛車側にも反撃の手があります。
四間飛車側は、歩と「角」の連携で、引き角側の飛車を抑え込むことに成功しました。より正確に言うと、お互い角と歩で、相手の飛車を牽制している状態です。
おわりに
いかがだったでしょうか。引き角単体で攻めてきたとしても、結果図の時点では、互角の勝負と言えるかと思います。四間飛車側の狙いとしては、3三の地点の銀をいただいて、8三の地点に打ち込みたいところですが(飛車をいただくことが出来る)、そうはさせじと引き角側も△4四歩と塞いで来る可能性が濃厚です。
果たしてこの後、どう指していけばよいのでしょうか?そのあたりは、「定跡の後ってどうなるの」シリーズで検証していきたいと思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
おまけ
ここからはちょっぴりおまけです。
第13図の四間飛車基本形ですが、 もしこの時点で引き角側が銀を6二に上げておらず、7一のまんまで、ろくに玉を囲いもせずに引き角で攻めて来ようとしている場合は、角が3一に引かれた時点で、飛車を回しておいた方がよいかもしれません。
というのもこの場合、▲8二飛成と敵の飛車を取ってもタダ取りにならず、△同銀されてしまうだけだからです。一旦飛車を回して△8六角を防ぎ、玉を囲った方が、安全かもしれません。