四間飛車の中盤に数の攻めを適用する方法とは?

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本エントリーでは、とかく分かりづらいと言われる四間飛車の中盤に対し、数の攻めの原理を適用して敵陣を突破する方法について、検討してみたいと思います。

四間飛車で攻められないあなたへというテーマを扱ったサブエントリーの、第二回目になります。

はじめに

前回のエントリーでは、四間飛車の中盤を論じる前に、そもそも将棋の中盤とはなんなのかについて、検討してみました。

結果、将棋の中盤力とは、敵陣突破して成駒を作る能力ではないかという仮説と、敵陣突破して成駒を作るための基本原理である数の攻めに、行きつきました。

そこで本エントリーでは、四間飛車の中盤において、数の攻めにもとづいて敵陣を突破し、実際に成駒を作る方法について、考えてみたいと思います。

検討したい、数の攻めに基づいたテクニックは、大きくは以下の二つです。

  • 何かの駒を犠牲にしてと金を作る
    • 大抵は、銀を犠牲にします。
  • 何かの土台の上に、金駒を置く
    • 土台は大抵、歩か桂馬です。
    • 下準備として、
      • 大駒に睨まれて動けない駒を狙います。
      • 何かの駒を犠牲にして、金駒を調達します。
      • 大抵は角です。

銀を犠牲にしてと金を作る

棒銀なんかではよく見るテクニックだと思いますが、四間飛車の場合、対居飛車穴熊の持久戦などで、活用されているのではないかと思います。例えば、こんな局面。

【第1図は△2ニ銀まで】
http://shogipic.jp/v/Gfv.png

今、△2ニ銀と上がって、穴熊の囲いに入られたところです。ここで、仕掛けてみたいと思います。

【第2図は▲5五歩まで】
▲5五歩
http://shogipic.jp/v/Gfw.png

歩を合わせに行きました。ここではご丁寧に、取ってくれるものとします。

【第3図は△5四歩まで】
△5五同歩▲同銀△5四歩
http://shogipic.jp/v/Gfx.png

思わず、▲6六銀と引きたくなるところですが・・・

【第4図は▲6四歩まで】
▲6四歩
http://shogipic.jp/v/Gfz.png

▲6四歩と打って出ます。

6三の地点にご注目ください。

この瞬間、攻め駒の利きの数が優っています。後手は金1枚しか利いていないのに対し、先手は飛車と歩の2枚が利いています。よって、数の攻めの原則に則ると、6三の地点を突破して、成駒を作れることになります。実際にやってみたいと思います。

【第5図は△5五歩まで】
△5五歩
http://shogipic.jp/v/Gg1.png

仮に△5五歩と一時的に銀損をしたとしても・・・

【第6図は▲6三歩成まで】
http://shogipic.jp/v/Gg2.png

敵陣を突破して、歩を成り込むことが出来ます。同金と取れば同飛成と金を取られる上に龍を作られてしまいますし、金を逃せば銀が取られます。

【第7図は▲5三と金まで】
△4ニ金▲5三と金
http://shogipic.jp/v/Gg3.png

ここで金でと金を払われても、今度は龍に成り込むことが出来ます。

というわけで、数の攻めの理論を駆使し、一時的に銀損したものの、見事敵陣突破して成駒を作ることに成功しました。しかも、ちゃんと銀も取り返して、駒損も回復しています。

歩の上に金駒を置く

続いては以下の、四間飛車vs棒銀の局面図を例に、敵陣突破について考えてみたいと思います。

【第8図は▲6六角まで】
▲6六角
http://shogipic.jp/v/GhR.png

今、四間飛車側が▲6六角と上がったところです。▲1一角成と馬を作られてはたまらんので、後手は角の進路を塞ぎます。

【第9図は△4四歩まで】
△4四歩
http://shogipic.jp/v/GhS.png

ここで、敵陣突破のための第一の仕込みを発動します。

大駒に睨まれて動けない駒を狙う

今、大駒に睨まれて動けないのが、まさにこの△4四歩ですね。動いてしまうと、▲1一角成と馬を作られる上に香損してしまいます。そこで、

【第10図は▲4五歩まで】
▲4五歩
http://shogipic.jp/v/GhU.png

▲4五歩と、この動けない駒を狙います。この時点で、4四の地点に利いているのは、先手が歩・角の2枚、後手が銀の1枚だけです。よって、このままだと、数の攻めの理論に則り、後手は突破されてしまいますね。そこで、

【第11図は△4ニ金右まで】
△4ニ金右
http://shogipic.jp/v/GhV.png

△4ニ金と、後手も利きを足します。後手に利きを足されたら、

【第12図は▲4八飛まで】
▲4八飛
http://shogipic.jp/v/GKl.png

先手も飛車の利きを足します。飛車角の利きが揃ったので、そろそろ第二の仕込み、

何かの駒を犠牲にして、金駒を調達する

を決行します。

【第13図は△3三金まで】
△3三金
http://shogipic.jp/v/Ghg.png


一見、後手が3三金とさらに利きを足すことにより、敵陣突破出来ないように見えます。4四の地点に対する先手の利きは歩・角・飛の3枚、後手の利きは銀・金・金の3枚。数の攻めの理論に則ると、先手は1枚足りていませんね。しかし、第二の仕込みを実行することにより、

局所的に数の攻めを成り立たせることが出来る

のです。やってみたいと思います。

【第14図は△4四同銀まで】
▲4四歩△同銀
http://shogipic.jp/v/Ghd.png

まず、▲4四歩と突っ込みます。同銀でも同金でもいいんですが、とりあえず同銀と取るとしましょう。ここで、仕込みを決行します。

【第14図は▲4四同角まで】
▲4四同角
http://shogipic.jp/v/Ghe.png

角を犠牲にして、銀を調達しました

【第15図は△4四同金直まで】
△4四同金直
http://shogipic.jp/v/Ghh.png

放置したら馬を作られてしまいますので、同金直と取りますが、

【第16図は△4三金まで】
▲4五歩△4三金
http://shogipic.jp/v/Ghj.png

再度▲4五歩と打たれると、△4三金と引くしかありません。同金と取ると、同飛と取られちゃいますからね。ここでついに、二つの仕込みを経て、元々の狙いを決行します。

【第17図は▲4四銀まで】
▲4四銀
http://shogipic.jp/v/Ghk.png

歩の上に銀を置きました

この銀は金2枚に当たっているので、逃げても一方が取られてしまいます。なので同金と取りますが・・・

【第18図は△4四同金直まで】
△4四同金直
http://shogipic.jp/v/Ghm.png

この瞬間の4四の地点をご覧ください。

先手が歩・飛の2枚の利きになっているのに対し、後手は金1枚しか利きがありません。つまり

数の攻めの成り立ちます

ね。では、やってみましょう。

【第19図は△4四同金まで】
▲4四歩△同金
http://shogipic.jp/v/Ghp.png

見事、突破出来ました・・・と、言いたいところですが、このまま同飛と金を取っても、△4三歩とか打たれると、引き上げるしかありません。成駒が出来ていないので、まだ敵陣突破出来たとは言えません。そこで、

【第20図は▲4五歩まで】
▲4五歩
http://shogipic.jp/v/Ghq.png

さらに▲4五歩を「おかわり」します。

【第21図は▲4四歩まで】
△4三金▲4四歩
http://shogipic.jp/v/Ghr.png

今度は、△4三金と引かれても、▲4四歩と追撃出来ますね。

【第22図は△4ニ金まで】
△4ニ金
http://shogipic.jp/v/Ghx.png

さらに金が逃げるようであれば・・・

【第23図は▲4三金まで】
▲4三金
http://shogipic.jp/v/Ghy.png

今度は、歩の上に金を置きます。玉が逃げると金がただ取りになってしまうので、同金と取ると・・・

【第24図は△4三同金まで】
http://shogipic.jp/v/Ghz.png

この瞬間、再び数の攻めが成立しています

4三の地点の利きを確認すると、先手が歩・飛の2枚に対して、後手は玉の1枚のみですね。よって、

【結果図は△4三同歩成まで】
http://shogipic.jp/v/Gi0.png

見事、敵陣を突破して、成駒を作ることに成功しました。ここまでいくと、龍を作れることもほぼ確実ですね。加えて、後手の囲いも崩壊しています。

おわりに

というわけで、本エントリーでは、vs四間飛車の代表的な持久戦である穴熊と、代表的な急戦である棒銀相手に、「数の攻め」をベースに敵陣を突破し、成駒を作る方法について、みてみました。

特に、藤井猛九段は、歩の上に金駒を置いて、「おかわり」を繰り返して敵陣突破する戦法を、「ガジガジ攻め」と名付けています。藤井猛九段の代名詞、「ガジガジ流」の源泉がこの攻めです。

次回のエントリーでは、これをベースに、少し定跡を外れた、なんとなく攻めてこない相手に対して、四間飛車側から攻める方法について、試行錯誤してみたいと思います。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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藤井猛の攻めの基本戦略 (NHK将棋シリーズ)

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